吉野山に桜紅葉を撮りに行きたいと、何年も前から考えていた。それも折角行くのだったら、夜の内に雨が降り、朝から晴れるような日がいい、なんて欲張るものだから、これまでに行く機会がなかった。
どうして雨かと云うと、雨上がりは霧が出るのではなかろうかと考えたのだ。今年もそんなお天気を待っていたら、上手い具合に、先日そんな予報が出た。
それを聞いて張り切って出かけたら、狙い通り吉野駅付近から先は霧だった。してやったりと霧の中を車で登って行くと、如意輪寺の先で道路が通行止めになっていた。
道路工事によるものらしいので、如意輪寺の駐車場に車を置いて、上の千本まで山道を歩いて登ったが、見えるはずの土産物屋も蔵王堂も、霧に包まれ何も見えない。
おまけに、その霧が全く動かない。少しでも動きがあれば遠くは無理としても、近くにいい被写体が現れたりするのだが、今の状態ではそれも期待できない。
何かないかとウロウロしていたら、空き家になった民家の横に上の写真のような赤い実をつけた植物があった。こんな野草は見たことがないし、この家の菜園だったような所なので、ここに以前住んでた人が植えた名残だろう。
この可愛い赤い実や、周りのチカラシバの穂には水滴がついていたので、しゃがみ込んで撮影に夢中になっていた。
そうしたら急に明るくなったので顔を上げると、さっきまで霧に包まれていた蔵王堂がくっきり見える。しかし、期待していた霧は跡形もなく消えていた。
せっかく霧を目当てに来て、霧が晴れるのを長い間待ったのに、これではがっかりだ。
このまま帰ろうかと思ったが、さっきの赤い実を思い出してもう一度戻り、今度は這いつくばってこんな写真を撮った。
帰りの車の中で、もう少しあの赤い実を観察すれば、よかった。そうすれば、もっと面白い写真が撮れたのではなかろうか?と後悔したが、もう遅かった。