昨年、河瀬直美監督の映画「殯(もがり)の森」を見たときから、僕は新緑の季節を待ちわびている。それは、この映画の美しいシーンが僕の頭に焼きついているからだ。
「美しいシーン」と言っても、映画の内容的なシーンではなくて「美しい映像」だ。カンヌ映画祭でグランプリを受賞した、この映画を見た人は多いだろうが正直に言って、僕には「この映画の良さ」は今ひとつ理解できず印象は薄い。
ただ、映画の冒頭で見た、新緑の茶畑の映像は本当に美しかった。野辺の送りの場面で、まばゆいまでに美しい「新緑の茶畑」をゆっくりと歩く、葬儀の行列の印象は強烈だった。それを見て、僕も新緑の茶畑の写真が撮りたくなったので春を待っている。
調べてみると、この美しい茶畑のロケ地は奈良市の「田原地区」だったそうだが地区は広い。それに田原地区には茶畑が多いので、いきなり撮影に行ってもどこに行ったらいい写真が撮れるのか分らない。
そこで、春までに事前に下見に行こうと思っていたが、昨日はいいお天気だったので出かけた。
西名阪の福住から田原地区に向かう途中で、鈴なりの柿が目についた。
なんと言う柿か判らないが、正月も終わったというのに鳥にも食べられず残っていた。
赤い柿の実が鈴なりにぶら下がった大きな柿の木が何本もあったが、いざ写真を撮ろうと思うと難しい。
霜解けに足をすべらせながら、やっと一枚撮った。
田原地区の手前で茶畑があったので登って行ったら、丸く刈り込んだお茶の木が面白い影を作っていた。
そして、春に備えて茶畑の刈り込み作業をしている風景に出会った。
青い空の下に午後の日を受けて、手入れの行き届いた茶畑は絵になる。こうして見ると、茶畑は新緑でなくても結構美しいが、映画の新緑の茶畑はもっともっと美しかった。
途中で寄り道ばかりしていたので、田原地区に到着するまでに日が暮れてしまった。それで、昨日は肝心の春に行く撮影ポイントは見つけられなかった。あ~あ、また出直そう。